2011/05/05

お披露目儀式の日


儀式当日の朝は快晴!
朝から庭ではガムラングループが演奏を続けている。村のサディアさんがリーダーだ。ティルタサリのメンバーだったサディアさんは日本ではめったにお目にかかれないような笑顔をたたえた人。今日は特別うれしそうにパタパタと太鼓をたたいている。いつもの朝とは違う高揚感の中、昨日テラスの端に準備してあった銀色の料理ケースに、村の人たちが次々料理を盛りつけていく。高坏の上には餅米や黒糖、椰子などを練り込んで作った菓子が数種、隣にはマンゴスチン、サラックなどの果物が高くのせられ、果物がたわわに実るバリを象徴? さすが儀式に慣れたバリ人の手業、手慣れたものだ。最後に色とりどりの花弁を随所に盛りつけ、あとは客を待つばかり。


ここまでの準備は、スバトゥ村のバンジャールの協力はもちろん、僧侶から料理、芸能、闘鶏、そしてクトゥット氏という花のコーディネーターの手配まで、ほぼすべてと言っていいくらい、地主のニョマンさんの采配によるものだ。わたしたちのしたことは、さてどうしようとおろおろして、彼の提案にうなずいただけかもしれない。わたしたちがこの朝の手際よい進行を見てほっとしたのは言うまでもない。

しばらくすると三々五々人が訪れてきた。

ところで、私たちは一応こちらの流儀に従って、正装をする。女は腰にバティックのサロンを巻き、上着は身体にぴったりしてレースがふんだんに施されたブラウス。コルセットで体型を整えた上で着用するのだが、暑い中この装束で過ごすのには気力が必要だ。男も同様、ニョマンさんが僕のを貸すよ、と持ってきた上着は黒い学生服のような詰め襟の長袖だから、半袖シャツ一枚で過ごしてきた身にはかなりのガマンが必要である。しかし、同じ条件下でもお祭り三昧のバリ人は何食わぬ顔つきで飛び回っているのだから、その忍耐力には驚かされる。サロンの着方が分からない日本からのお客には、なんと隣村の王様が着付けをしてくれた。最後に頭に鉢巻のように巻く布も見事な形に出来上がり、王様の手助けで仕上がったにわかバリ人は、嬉々として料理をほうばり客同士の歓談に情熱を傾ける。

庭の真ん中あたり、芝生の上には僧侶が読経をあげる小さな高床の小屋が建てられ、僧侶が来るのを待つばかりだ。日常の光景とは大きく異なった庭の中でも私が最も気に入ったのは、村人のお供え物が所狭しと並べられたパーゴラだ。黄色の花が咲くパーゴラにはよく見ると大きく実った青い果物がいくつも垂れ下がっており、その下のベンチを台座にして様々な盛りつけのお供えが重なりあっている。けっして豪華ではないが可愛らしく、自然へのオファリングとしてこれほどふさわしいものはないのではないか。


儀式のハイライトはトペンという仮面舞踊だ。グン・バグースの強い勧めで、バトゥアン村からジマ氏が来てくれた。ジマ氏と一緒に踊るのはスバトゥ村のニョマン・サウリ氏。人間国宝級名手らしい彼らは、朝早くから庭の片隅で準備を進めていたが、太陽がほぼ頭上に上がった頃、にわかに仮面を取り出し顔につけたかと思うと、ガムラン楽団の音色が勢いを増し、弾み出した。